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muni Art Award 2021 審査過程

今回のアワードについて、審査の過程について皆様に公開いたします。審査過程についてご興味のある方への一助になればと存じます。

応募

応募期間 2021年2月25日~4月25日

提出物  一次審査として未発表作品の画像、ポートフォリオ、自由記述式作文

 

未発表作品とは、他の公募展に応募していない作品、個展及びグループ展に出品していない作品とした。ただし、2020年度の大学などでの卒業制作展及び修了展などでの展示や、個人の SNSのアカウント上で発表した作品は未発表作品とみなした。

自由記述式作文は以下であった。

質問1:唯一無二のアートとはどういうものであるべきだと考えるか、あなたの考えを書いてください。(1000字以内)

質問2:影響を受けたアーティストとその理由を書いてください。(任意・1000字以内)

質問3:アートに限らずあなたにとってもっとも感動した体験をひとつあげてください。(任意・1000字以内)

質問4:あなたにとって、日本美術・現代美術・サブカルチャー、その他の関連分野について、大切にしていることがあれば理由を書いてください。(任意・1000字以内)

​一次審査

審査時期 2021年5月上旬~中旬

審査 審査員田中千秋と事務局にて

10代から60代まで幅広い年齢層が総勢243名の方々が応募くださった。作品画像はもちろん、提出物のポートフォリオ、自由記述式作文に加え、自薦のInstagramなどのSMSも含めて審査を実施。どの作品を二次審査へと進めていくのか、非常に悩ましい時間であった。選考は計5回行われ、3回目以降はメンバーで議論しながら決定した。

二次審査への通過の可否は、本当に紙一重の方々が多くいた。そういった場合、ポートフォリオの過去作品の完成度と、作品コンセプトや自由記述式作文などで客観的な視点で自己PRができていることなどが分かれ目となった。

一次審査では、36名の作家の作品を選出した。内訳は、平面作品:19点、立体作品:12点、映像作品3点、インスタレーション:2点であった。

二次審査

応募期間 2021年2月25日~4月25日

提出物  一次審査として未発表作品の画像、ポートフォリオ、自由記述式作文

 

審査員 7名

画家 池永康晟

美術家/画家、武蔵野美術大学教授 諏訪敦

ギャラリスト、AaP/roidworksgallery主宰 井浦歳和

アートフェア東京マネージングディレクター 北島輝一

増保美術代表取締役、GALLERY KOGURE 小暮ともこ

ギャラリー紅屋代表取締役 高島匡夫

秋華洞代表取締役社長 田中千秋

作品を一堂に展示し、ポートフォリオや一次審査時の自由記述式作文なども参考資料とした。一次審査通過者36名から7名が辞退となり、29名の作品の審査となった。

本審査では、全3回の選考が行われた。

まず最初に1時間の時間をかけ、審査員がそれぞれ作品やポートフォリオなどを見て、一人10票を通過者と思う作家に投票した。この時点で投票されなかった人は次の審査に進めないというルールのもと、その投票結果をもって全員で1時間議論をした。2回目は30分間作品を見て、各審査員3票を投票。それをもって30分議論を実施。最後の3回目にまた30分間作品を見て、最終審査へ進むファイナリストを1時間ほど議論して決定した。その際、仮の審査員賞も決定した。審査員賞は、ファイナル審査に進まない作家を選出しても良いという規定を設けた。

 議論をすることで他の審査員には気づかなかった作品の良さが伝わったり、1つの作品に対して、一人の審査員の評価の後に他の審査員から別の角度の評価のコメントが出たりと、お互いの意見を率直に言う場となった。それにより、高評価へとつながっていった作品もあった。これは、投票するだけの審査では決して起こらなかった事象である。

 結果として、ファイナル審査へ進む8名のファイナリストが決定し、惜しくもファイナリストには選ばれなかったが、審査員賞の田中千秋賞は井越有紀に決定した。

 議論の中で、「二次応募作品よりも一次応募作品の方が良いのではないか」「ポートフォリオにある他の作品の実物が見たい」など、作家の奥行きを重視した審査員から追加作品の提出が提案された。突然の要望にファイナリストたちも真摯に応えてくれ、複数の作品の実物を含めて審査することとなり、より多角的なファイナル審査へとつながった。

 なお、惜しくも二次審査を通過しなかった作家には、議論の際に審査員から出たコメントをフィードバックとして連絡した。

ファイナル審査

審査日 2021年8月31日

審査員 二次審査と同様

ファイナリスト8名

岸裕真(映像)、木原健志郎(平面)、木原幸志郎(平面)、駒嶺ちひろ(立体)、辻將成(平面)、土井直也(インスタレーション)、原ナビィ(平面)、松本千里(立体)

ファイナル審査は、面談形式の審査であった。各作家30分ずつ、冒頭に短く自己紹介をし、その後審査員との質疑応答に入る。木原健志郎・木原幸志郎兄弟は、審査員の要望により二人同時に1時間という面談となった。

 作家と対面し、意見を交換しあうことでより深く作品や制作に対しての考え方などを知ることができる審査となった。

「もっと鬼気迫る感じの作品を描いて欲しい」「作品のタイトルが・・・・(イマイチ)」など、厳しい言葉も出たが、それは、審査員が真剣に作家と作品に向き合っているからこそ。また、良いところは褒め、受け答えにより笑い声が起きることも多々あった。

 面談が終わった後、各作家からは、「自分の作品がどう見られているかがよくわかった」「改善点がわかった」などのコメントをいただき、自己認識の更新や改善に繋がり、成長の一端としての役割を担ったと思う。

 グランプリの決定については、1時間を超える議論となったが、油彩画の原ナビィと映像作品の岸裕真のどちらがグランプリにふさわしいかが焦点となった。

 原ナビィの否が応でも人の目を引きつける作品のパワーと色彩感覚、過去の作家から吸収する姿勢に加え、本人の明るく小気味よい性格と明確な受け答えをする自信が審査員たちを惹きつけた。

 岸裕真は他の応募者とは全く違うAIを使うという制作手法が審査員たちの興味を引いた。今回の応募作品は、浮世絵数百枚をAIに読み込ませ、AIが生成した映像が作品になっている。岸裕真はAIを“彼”と呼び、擬人化し、全く別の知性として捉えている。彼の作品は、全く別の知性との共同制作というアートの制作という概念に一石を投じるものとなった。

 かなり喧々諤々の議論となった。

 このアワードの主旨からすると岸裕真は外せない存在というコメントもあった。ただ、それは原ナビィの作品の良さを否定するものではないということ、また、彼女の作品の他の追随を許さないパワーと今後への期待が高評価を得、最終的に原ナビィがグランプリに決定した。なお、議論の末、グランプリ対象作品は、二次応募作品の「ポイズンポイズンポイズンズン」ではなく、一次応募作品の「ヌ ぺろんちょ」となった。

 各審査員賞もこのファイナル審査で最終決定となった。髙島匡夫賞である木原健志郎の対象作品については、追加で提出した「Portrait e」となった。

各賞は以下の通り。

 

原ナビィ「ヌ ぺろんちょ」:グランプリ 

 

岸裕真「Seeds」:ファイナリスト 諏訪敦賞 北島輝一賞

木原健志郎「Portrait e」:ファイナリスト 髙島匡夫賞

木原幸志郎「New Creature」:ファイナリスト

駒嶺ちひろ「ひとがたシリーズNo.40(ハチ)」:ファイナリスト 井浦歳和賞 池永康晟賞

辻將成「YAKUDOW [ R,P,O ] 2021 - Absent body」:ファイナリスト 

土井直也「新・だるまの入れ物」:ファイナリスト 小暮ともこ賞

松本千里「雲脈を絆して」:ファイナリスト

井越有紀「ひとつのなかにふたつある」:田中千秋賞

作品画像、作家プロフィール、作品コンセプトに加え、審査員からのコメントや受賞コメントも掲載

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